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認知症について

 

認知症は記憶の低下を主症状とする疾患ですが、周囲の状況や自分の置かれた状況がよく把握できず、不安になるのが特徴です。患者さんが最近むやみに怒りっぽくなったとしたら、それは自分の言いたいことを周りの人たちが解ってくれないからかもしれません。だから認知症の患者さんへ接する基本は、不安を取り除いてあげることです。しかしそうは言ってもそれが簡単ではないのです。

 

 

認知症の症状

 

中核症状と行動・心理症状に分けられます。

 

 

中核症状とは・・・様々な記憶の障害です。

[記憶障害]

・今日誰に会ったかなど、新しいことを覚えられない

[見当識障害]

・季節、日付、時間が解らない

・自分の居る場所がどこか解ってない、帰り道が解らない

・家族、知人、制服着た人が誰か解らない

[理解・判断力障害]

・何度説明しても、のみ込めない

[実行機能障害]

・家事・料理の手順が下手になった

・一日の予定が立てられない、実行出来ない

行動・心理症状(行動と: Behavioral 心理上の: Psychological 症状: Symptoms 認知症での: Dementia = BPSD)が出現すると家族が疲弊し、うつ病になることもあり、一家に二人病人を抱える悲惨な状況に陥ることもあります。

 

行動・心理症状(BPSD)とは・・・

認知症になっても自宅で、地域でゆとりのある生活をしたいところですが、行動・心理症状(BPSD)が出現すると必ずしもそうはいきません。次に例示するような出来事が頻発し、家族も地域も振り回され、疲弊します。家族に病人が出ることもあります。言うまでもなく患者さんご自身には生命の危険が伴います。

 

・財布がなくなったと騒ぎ、家族がドロボー呼ばわりされる

・我が儘になり、言うことを聞いてくれない 介護拒否

・高速道路を逆走する

・怒りだし家族や介護者を蹴る、叩く

・夜中出歩き、保護される

・幻聴、幻視が夜中を中心に出現する

・尿便失禁(の始末)

・過食、異食(花瓶の花、水、大便など)

・収集癖(屋内が不潔になる ゴミ屋敷)

・万引き(どうでもいいようなものを盗って保護される 繰り返す)

 

根治的治療薬は未だ開発に至っていませんが、適切な治療で症状を軽減改善することは出来ます。認知症はいまや診療科の垣根を越えた全医学的疾患です。その中心に位置し、指導的に治療に当たるのが精神科です。福岡市の認知症医療連携システムは九州大学と福岡大学の精神科、神経内科を拠点病院として進められています。福岡県では認知症医療センターを指定していますが、全て精神科病院です。BPSDの予防と適切な治療のためには精神科を受診しましょう。当院の院長はもちろん福岡市認定の認知症相談医です。

 

 

認知症治療薬

 

お薬も優しく使うのが基本です。ご高齢の方には薬を控えめに処方するのが、当病院の方針です。実際抗不安薬でも睡眠薬でも、ご高齢の方は若い人より少量で効果があります。

アセチルコリン性神経伝達促進薬、グルタミン酸性神経伝達抑制薬、漢方薬があります。

 

a) アセチルコリン性神経伝達促進薬

アリセプト、レミニール、リバスタッチなどがあります。

記憶や学習力を高めます。認知症ではアセチルコリン性伝達が弱まっているので、これを 改善する薬を飲みます。

b) グルタミン酸性神経伝達抑制薬

メマリーはこのタイプの薬です。

記憶や思考力を高めます。しかし多くの認知症ではグルタミン酸性神経伝達が長年過剰に 働き、神経機能を疲弊し、その結果逆に記憶能力が低下するのが認知症の病因と考えられています。そのため グルタミン酸の放出を抑え、神経細胞を疲弊から回復させます。

c) 漢方薬

抑肝散や抑肝散加陳皮半夏がよく用いられます。当院では加味逍遙散も用います。 

抑肝散には双子の兄弟のような抑肝散加陳皮半夏という製剤があります。抑肝散は当帰、 川キュウ(センキュウ)、柴胡(サイコ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、茯苓( ブクリョウ)、白朮、甘草 という生薬から構成されています。当帰と川キュウは体力を付けます。柴胡と釣藤鈎は精神 安定作用があります。茯苓と川キュウは利尿を促し、体液の代謝を促進します。白朮と甘草 は茯苓と川キュウの作用を程よく調節します。抑肝散加陳皮半夏はさらに陳皮(ミカンの皮)と半夏(サトイモに似た芋の皮)が加えられています。半夏・陳皮の組み合わせは古来胃薬として常用されていました。

 

※ 当院ではこのように、生薬の作用を理解し、より体に優しい抑肝散加陳皮半夏を用いています。産婦人科でよく処方される加味逍遙散も抑肝散加陳皮半夏と生薬構成が類似しています。このため当院では女性の認知症の方には、加味逍遙散もよく用います。

 

症状を標的とした薬の使い分け

a)とb)・・・認知症の中核症状、すなわち短期記憶(朝ご飯に何を食べた、今日誰と会ったなど)、見当識(今日は何月何日で、自分はどこにいるか、)遂行能力(今日は何時に家を出て歯医者に行った後郵便局へ行く予定だなど)を改善します。意欲がなくなり、不活発で、まるで別人のようになることもあります。

c)・・・抑肝散加陳皮半夏や加味逍遙散は、周辺症状の不安や感情興奮、粗暴な言動を改善します。